2018年の訪日外国人数は、前年比8.7%増の3,119万人で、過去最高になりました。また、6年連続で過去最高を更新し、2020年に4,000万人達成という目標に向けて、堅調に推移しています。

しかしながら、国土交通省が「訪日外国人客が旅行中に困ったこと」というアンケートを行ったところ、様々な受け入れ環境に対する不満が出てきました。

参照元:国土交通省 「平成30年度 観光の状況 令和元年度 観光施策 要旨

訪日外国人客が旅行中に困ったことは?

参照元:観光庁「訪日外国人旅行者の受入環境整備に関するアンケート(平成30年度版)」より
インバウンドらぼが作成

標記のアンケートにある、訪日外国人の困ったことに対応するため、観光庁は2016年度に、観光案内所や公共交通機関などの施設で、多言語対応や無料Wi-Fi環境の整備などの補助制度を創設しました。

2019年度には、ストレスフリーで快適な旅行環境を実現するために、訪日外国人が数多く訪れる市町村に、新たに創設された国際観光旅客税を活用し、下記の取り組みを支援する制度を創設しました。

  • 多言語対応
  • 無料公衆無線LANの整備
  • キャッシュレス化の推進
  • 公衆トイレの洋式化

この制度を最大限活用することにより、今後3年間で約100カ所の観光地の受け入れ環境を、抜本的に改善することを目指しています。

日本各地のインバウンド向け観光振興の取り組み

日本の各地方では、インバウンド誘致や観光地振興のために、どのような取り組みが進められているのでしょうか。各地の取り組みについて、ご紹介します。

1.北海道

スマートフォン決済(アリペイ、ウィーチャットペイ)の導入

北海道を訪れる訪日中国人客は多く、外国人延べ宿泊者数の約25%を占めています。また、中国では、スマートフォン決済が一般的に行われています。 そこで、北海道運輸局は、小樽市の商業施設や、乗り合いバス、医療機関等でスマートフォン決済導入に向けて、実証実験を行いました。参画事業者の多くは、実証実験後もスマートフォン決済を継続しているため、今後も北海道全体に展開していくそうです。

〇アドベンチャートラベル人材育成に係る取り組み

欧米を中心に急速に発展している、アドベンチャートラベル(AT)ですが、訪日外国人に、自然や文化などの魅力を、楽しくわかりやすく伝えられるガイドが不足しています。

そこで、北海道運輸局は、英語が堪能な学生にガイド体験会を実施しています。さらに、AT先進地のニュージーランドでガイド産業や育成方法の調査を行い、その結果を今後のAT施策に活用していくそうです。

〇大規模地震等に備えた訪日外国人旅行者への情報集約・提供方法に関する実証事業

2018年の北海道胆振東部地震では、訪日外国人に、必要な情報を迅速に提供できず、不安を与えることになりました。

そこで、行政をはじめとする関係機関の協力により、実効性のあるガイドラインを策定し、災害時に訪日外国人へ正確な情報を迅速に提供できる、情報伝達の仕組みを構築しました。

2.東北

○「東北観光復興対策交付金」を活用した観光復興

東日本大震災による風評の影響により、東北の訪日外国人延べ宿泊者数は121.4万人泊と、伸び悩んでいでました。

そこで、2020年度の訪日外国人延べ宿泊数150万人泊の目標に向けて、東北の魅力である四季のPR動画を活用し、米国や中国など12市場に対し、各市場の特性に合わせた、東北の魅力を伝える観光コンテンツ動画広告を展開するなど、認知度の向上を図っています。

さらに、東北ならではのお祭りや、食などの伝統文化とスノーアクティビティを組み合わせた着地型旅行商品造成に取り組み、Wi-Fi、多言語表示の整備、キャッシュレス対応などの受け入れ環境の整備も行いました。

https://www.youtube.com/channel/UCeW1w74ZzPoF_xi9v2NEE-Q

○東北ファンの獲得に向けた新たな魅力の発信

台湾の学校教育関係者を招請し、震災遺構の視察や農家民泊など行い、教育旅行に関する意見交換会も行うなど、東北における教育旅行の魅力を発信しました。

また、ムスリムが多いインドネシアからの訪日外国人を集客するために、現地のメディアを招請し、FIT観光客向けに、公共交通機関で行ける観光スポットや、ムスリム対応の飲食店など、気軽に楽しめるスポットの取材を促しました。

3.関東

◯ラグビーワールドカップ 2019 日本大会関連観光プロモーション事業

2018年10月27日に、日産スタジアムで開催された「キャノン ブレディスローカップ2018」で、2019年の「ラグビーワールドカップ2019日本大会」の試合が行われる関東の5つの地方公共団体などと連携し、訪日外国人観戦客向けのブースを出展しました。

◯関東観光まちづくりコンサルティング事業

2016年に、観光による帆日外国人の交流人口の拡大を目的に、地域と関東運輸局が一体となって取り組んだ、観光まちづくりコンサルティング事業を実施しています。

その事業を活用し策定した、オリジナルの観光資源「真鶴ライフ」を中心とした、観光グランドコンセプト「幸せをつくる真鶴時間」とその後の取り組み状況について、2018年度に神奈川県真鶴市を訪問し、フォローアップが行われました。

グランドコンセプトのロゴマーク作成や、その周知活動、観光グランドコンセプトを具体的に実現するためのアクションプランの作成により、観光によるまちづくりに取り組みました。

4.北陸信越

〇アドベンチャートラベルによるインバウンド需要の拡大

長野県と新潟県では、通年型の観光地を目指し、長野・新潟スノーリゾートアライアンス実行委員会などと連携し、トレッキングやサイクリングを中心としたアドベンチャートラベル(AT)のぐりーんき冬季以外の拡充を進めています。

また、長野県では、世界有数の山岳リゾートとするために、中山道やAT関係者間のネットワーキングを目的とした「Adventure Connect」を開催し、2018年度には外国人登山者ガイド養成事業(実証事業)を実施しました。

○災害時の外国人観光客対応セミナーの開催

新潟市では、2019年3月4日に、宿泊施設を対象に「災害時の外国人観光客対応セミナー」

を実施しました。セミナーでは、「外国人旅行者のための避難誘導マニュアル」を活用し、2016年の 熊本地震を経験した宿泊施設の方を講師に招き、講演を行いました。

5.中部

○「中部の観光は元気です!」発信プロジェクト

飛騨地域・郡上市では、2018年7月豪雨後でも、観光地や観光施設、高速バス等の利用による交通アクセスに問題はありませんでした。しかし、JR高山線や長良川鉄道の一部が運休となっていたことから、風評による訪日外国人の減少が見られました。

訪日外国人客数の回復を図るため、「中部の観光は元気です!」を発信するプロジェクトを開始し、3か国語(英、中(繁体字)、日)のチラシを作成し、風評被害の払拭を図りました。

○多言語コミュニケーションをテーマに受入環境整備分科会の開催

訪日外国人が旅行中に不満を持っている「施設等のスタッフとコミュニケーションが取れない」という課題に対応するため、多言語コミュニケーションをテーマとした、受け入れ環境整備分科会を開催しました。

セミナーでは、最新の翻訳機器や翻訳・通訳システムが紹介されました。

○アクセス改善のための実証事業を実施

一部に集中している訪問先の分散・多様化を図るとともに、周遊性の向上、滞在時間の延長による消費の拡大に繋げるための実証事業を行いました。

関連する自治体や事業者による、検討会を開催し、二次交通や多言語対応型などの課題を確認し、タクシーに通訳案内士が同乗して見どころを案内する付加価値の高い着地型観光の商品化を目指し、モデルコースのモニター調査を行いました。

6.近畿

○「関西ツーリズムグランドデザイン 2021」を策定

2018年10月に、「広域連携DMO」である一般財団法人関西観光本部が、好調な訪日外国人のさらなる集客を促進するため、「関西ツーリズムグランドデザイン 2021」を策定し、5つの「重点テーマ」を決定しました。

  1. 基礎的データのリサーチ
  2. 「二極集中」から広域周遊の拡大
  3. “する/みるスポーツ“の観光コンテンツ化
  4. すべての人に優しい旅行環境の整備
  5. 従来型にとらわれない、新たな情報発信

○「快適に観光できる度合」を見える化

訪日外国人の急増による悪影響(オーバーツーリズム)が問題になっている京都では、紅葉時期の嵐山エリアで、Wi-Fiアクセスデータを活用して観光需要を予測し、「観光快適度」の見える化を図りました。

快適に観光できる時間帯での訪問や、周辺エリアへの回遊を促す検証を行いました。今まで訪日外国人が少なかった地域でも、「ウェブサイトを見て、空いていることを知って訪れてくれた方がいた」との声が聞かれ、一定の効果があったと思われます。

7.中国

○米子の街に灯りをともすプロジェクト

鳥取県米子市では、地域課題の解決を支援する取り組み「米子の街に灯りをともすプロジェクト」を、地域の公共団体や商工会議所などと協力して、実施しています。

米子空港の国際線拡大により、米子駅周辺に宿泊する訪日外国人を、多言語での地元グルメや特典サービスなどの情報を、周遊アプリで提供し、夜の街を楽しんでもらいながら、地元の消費拡大を促そうとする試みです。

○平成 30 年7月豪雨の風評払拭、観光客の回復に向けた情報発信活動

2018年7月の豪雨で、中国地方は多くの土砂災害が発生しました。観光地では、直接の被害は少なかったため通常通り営業していたにも関わらず、風評により訪日外国人の数が大幅に減少してしまいました。

同年9月に、特に影響が大きかった広島県呉市で、関係地方公共団体や瀬戸内をベースに活躍している、アイドルグループ「STU48」と協力して、「呉地域に来てクレ!観光PRプロジェクト」を実施しました。

さらに、同年11月には国内在住の日本人や、外国人インフルエンサーに中国地方を巡ってもらい、SNSやウェブサイトなどで情報発信を行いました。

8.四国

○四国八十八景プロジェクト

2015年から2017年に四国八十八景として相応しい景勝地の募集を2回行い、地方公共団体などから358箇所の応募がありました。2018年6月に観光列車を含む88カ所を、絶景の聖地として四国八十八景に選定しました。

選定箇所の管理者には、シンボルマークがデザインされたPR用幟旗とピンバッチを配布して、認知度向上を図るとともに、2018年11月18日~20日には四国八十八景を体験するモニターツアーを実施し、参加者のSNSや企業の媒体を活用して、情報発信を行いました。

○訪日外国人旅行者の周遊動態・趣向分析調査事業

増加する訪日外国人を、四国にどうやって誘導するか、そのためには何が必要かという点について、従来の経験・現場感覚による事業から、定量的なデータを基にした、事業実施・計画策定への脱却を図るため、以下の2つの調査事業を行いました。

●既存ターゲットである東アジアからの訪日外国人数を増加させるため、GPSデータを活用した周遊動態文政期調査を実施した。

●新規ターゲットを獲得するため、米国、フランス、オーストラリア、タイ、シンガポールに関する趣向分析調査を実施し、四国内の観光コンテンツと各国からの訪日外国人との親和性などについて確認を行いました。

9.九州

○ラグビーW杯を契機とした欧米豪からの誘客促進に向けた九州運輸局の取組

「ラグビーワールドカップ2019日本大会」、「2020年東京オリンピック・パラリンピック競技大会」の開催により、九州への訪日外国人の増加が見込まれます。

この機会を捉え、欧米豪から見た九州の認知度の向上と、長期滞在が可能となる受け入れ環境を整備するため、国際観光シンポジウム「九州インバウンド・未来へのトライ!」が、2018年9月7日に福岡市で開催されました。

リレー形式による全国各地域の先進事例報告や、「ラグビーワールドカップ2019日本大会」アンバサダーによる講演、九州観光のキーパーソンによるパネルディスカッションを通じて、さらなる連携強化と機運醸成を図りました。

10.沖縄

〇沖縄の酒蔵における訪日外国人旅行客受け入れ体制整備モデルケース形成事業

〇沖縄の酒蔵における訪日外国人旅行客受け入れ体制整備モデルケース形成事業

伝統的な日本産酒類である泡盛を活用した酒蔵ツーリズムの推進による、訪日外国人の旅行消費額の増加や、販売量増加につなげるために、泡盛の酒蔵での訪日外国人への対応ができるよう、受け入れ態勢強化の取り組みを行っています。

訪日外国人への対応で、最も課題になっている多言語対応について、対応マニュアルや指差し確認ツールを作成しています。また、通訳案内士を対象とした、泡盛の専門知識や用語を習得するための講習会や、酒蔵関係者には外国人接遇スキルを習得するための、講習会も開催しています。 さらに、訪日外国人向けの酒蔵モニターツアーも実施しています。

画像引用・記事参照元:国土交通省「平成30年度 観光の状況 令和元年度 観光施策 要旨

まとめ

いかがでしたか。全国各地で訪日外国人の増加を図るため、様々な取り組みが行われていましたね。

訪日外国人が、不満に思っている多言語対応不足やコミュニケーションが取れないという部分は、会社やお店でも問題になってくるのではないでしょうか。

訪日外国人への対応について、ツールなどの作成をお考えでしたら、お気軽に弊社までご相談ください。

インバウンドらぼ 編集メンバー H.M