以前(2018年)観光地に耐えられないくらいの観光客が押し寄せる「オーバーツーリズム」の事例を紹介しました。(【オーバーツーリズム】増えすぎた観光客、その事例と対策は?

当時、世界的に深刻化するオーバーツーリズムの影響を受け観光庁に設立された「持続可能な観光推進本部」は、2019年6月10日「「持続可能な観光先進国に向けて」のとりまとめを発表しました。 オーバーツーリズムに対する日本の意識調査や観光地での対策について見ていきましょう。

参考資料: 観光庁、オーバーツーリズム問題を重要課題として取り組みへ、現状と今後の取組みをとりまとめ

日本におけるオーバーツーリズムの現状

「持続可能な観光推進本部」はオーバーツーリズムについて、主要な観光地を抱える自治体と、それ以外の地方や全国的な意識傾向や、主要な観光地を抱える自治体のオーバーツーリズムへの対策について調査をしました。

主要な観光地を抱える自治体の現状

主要な観光地を抱える自治体の現状はどのようなものでしょうか。

観光庁・国土交通政策研究所が2018年に主要観光地を抱える地方自治体に対して実施した アンケート調査を見ていきましょう。

地方自治体が認識している観光についての課題

各自治体で、「混雑」や「マナー違反」といった課題について強く意識されています。また、その対策についても様々な対応策が講じられているようです。

オーバーツーリズムに対して行っている各自治体の対策についてアンケート結果

上記右図「対策に関する全体的な傾向②」では、約6割が「観光関連機関や民間事業者等との連携」での取り組みを実施していると回答しています。

出典:持続可能な観光の実現に向けた検討の経緯(PDF)

地方や主要な観光地を抱える自治体以外の地域傾向

国連世界観光機関(UNWTO)が行った都市観光に対する住民の認識に関する世界的調査を見ていきましょう。

国連世界観光機関が観光先進工区へ行った観光客の影響についてのアンケート

2019年1月の調査時点では、他の主要な観光国と比較して観光客の影響は30%前後となっており、「オーバーツーリズム」だと感じている割合はそれほど多くはないようです。

出典:持続可能な観光の実現に向けた検討の経緯(PDF)

2019年9月に迫った「ラグビーワールドカップ」や、「2020年の東京オリンピック」を控え、訪日外国人客は増え続けていますが、諸外国と比較すると不満を感じている人は少ないようです。各自治体も対策を講じており、良い傾向なのではないでしょうか。

参考資料:持続可能な観光の実現に向けた検討の経緯(PDF)

その一つの事例として、京都の対策を紹介していきます。

京都の対策例

日本有数の観光地、京都府の対策をご紹介します。観光客分散の事例3つと、日本で初めて行われた実証実験です。

季節で分散

京都市は、春の「桜」と秋の「紅葉」を目的に観光客が集中し、繁忙期は例年混雑していました。

閑散期の夏に「京の七夕」、冬に「京都・花灯路」のキャンペーンを実施し、ライトアップや盆踊り、特別拝観を実施することで観光客の平均化を図りました。

京都市の繁忙期と閑散期の観光客数データ。2003年は3.6倍差2017年は1.5倍差。
出典:京都市観光総合調査(2017年1~12月)P5 (PDF)

観光客数の差が最も大きかった2003年(平成15年)の3.6倍から2017年(平成29年)は、1.5倍まで差を縮めることができました。

朝・夜観光による時間分散

観光客が集中する日中以外のコンテンツ情報を発信することで、混雑の集中緩和と観光の時間帯の分散化を進めています。

京都市は旅情報サイト「ぐるたび」内の「京都にようこそ」にて特設サイト「京都朝観光」「京都夜観光」を2014年12月と2018年6月に開設しています。

参考資料:京都へようこそ 京都市×ぐるなび×ぐるたび

特設サイトは、京都市と株式会社ぐるなびとの「地域活性化包括連携協定」に基づき開設されました。

サイト外でも、世界遺産二条城では通常非公開の香雲亭で、7~9月の期間内に朝食会を行うなど、京都の朝活が盛り上がりをみせています。

参考:世界遺産 元離宮二条城 イベント情報 非公開・香雲亭での完全予約制 特別朝食

市街地以外への広域的な分散

京都府は、2014年11月より「もうひとつの京都、行こう。」キャンペーンを行っています。

京都市以外の府内の各エリアにスポットを当て、「お茶の京都」「森の京都」「海の京都」の3つの京都と、京都と大阪を結ぶ交通の要衝である「竹の里・乙訓」の4エリアの特設サイトを作成しています。

また、3つの京都のショートムービーを作成し、観光客の誘致と活性化を目指しています。

参考:もうひとつの京都、行こう。

【実証実験】ビックデータを活用した時間的分散

2018年11月10日(日)~12月17日(月)の40日間スマートフォン等のWi-Fiアクセスデータを活用し,特定の日時・スポットにおける観光客の混雑状況を予測、その情報を特設サイト「嵐山快適観光ナビ」で公開する実証実験を行いました。

これは日本初の試みとして、嵐山地域内でのWi-Fiアクセスデータを活用したものです。スマートフォン等のアクセスデータから、「エリア」「時間帯」での混雑状況をサイト公開の約2ヶ月前から蓄積・情報分析し供給しました。

「嵐山快適観光ナビ」のサイトは日・英の2言語に対応しており、日時・エリアにおける観光快適度(快適に観光できる度合)を予測し、おすすめ観光ルートを示すことで周辺エリアへの回遊を促し、 嵐山地域全体における観光快適度の向上につながりました。

参考:嵐山地域における観光快適度の見える化による 分散化実証事業の実施について

参考:【付録1】持続可能な観光の実現に向けた先進事例集 P56(PDF)

まとめ

京都は、季節(オフシーズン)による分散、時間分散、広域的(市街地以外)分散と3つの分散でオーバーツーリズム対策を行っているようですね。
また、日本で初めてのWi-Fiを取り入れたサイト(嵐山快適観光ナビ)の運用による混雑状況予測など面白い取り組みも行っていますね。

オフシーズンや訪問客の少ない時間への訪問の活性化や、訪問客の少ない場所へ新たな旅行ルートの開発などは、国連世界観光機関(UNWTO)「都市における訪問客の増加に対応するための戦略と対策」でも、推奨されています。

参考:「オーバーツーリズム(観光過剰)」?都市観光の予測を超える成長に対する認識と対応要旨(PDF)

オーバーツーリズム対策の一環として、WEBサイト制作や改修、広告の作成など新たな取り組みをされる際に弊社がお役に立てることがあれば、ぜひご相談ください。

インバウンドらぼ 編集メンバー M.H