エコツーリズム、グリーンツーリズム、ロケツーリズム・・・。「○○ツーリズム」と名付けられた、多くの旅のスタイルがあります。

では、「アドベンチャーツーリズム」のことはご存知でしょうか。「アクティビティ」「自然」「異文化交流」の3要素のうち、2つ以上の要素で構成される旅行のことです。たとえば、シーカヤックやラフティング、トレッキングや山登りなど、海・山・川を生かしたアウトドアのアクティビティのほとんどが該当します。

ヨーロッパ・南北アメリカにおける市場規模は巨大で、推計4,500億ドル(約49兆円)にも上ります。一方、日本での市場規模は約2.6兆円

ヨーロッパと南北アメリカに比べれば、まだ小さな市場ですが、2018年9月には「日本アドベンチャーツーリズム協会」が設立されるなど、日本でも活性化させるための取り組みが始まっています。

* JTB総合研究所プレスリリースより

アドベンチャーツーリズムの特徴

①富裕層に好まれる

北米では、下記のようなデータがあります。

2014年 アドベンチャーツーリズム旅行者 世帯収入別構成比
年収 %
Under $35,000 7.5
$35,000–$49,999 9.2
$50,000–$74,999 18.6
$75,000–$99,999 19.5
$100,000–$149,999 25.7
$150,000–$199,999 8.0
$200,000–$249,999 4.7
$250,000 or more 6.8

参照:ADVENTURE TRAVEL TRADE ASSOCIATION「North American Adventure Travelers」(PDF)

アメリカの国勢調査局によれば、この年の平均世帯収入は、約5万4千ドル(約560万円)でした。それに対して、アドベンチャーツーリズム旅行者の60%超は、7万5千ドル(約790万円)以上の世帯収入を持つ層。お金に余裕のある層に好まれることが分かります。

②一人当たりの消費額が高い

また、世帯の高い層が多いからか、一人当たりの消費額が高いことも特徴です。

引用元: 経済産業省 北海道経済産業局「日本初、アドベンチャーツーリズムマーケティング戦略策定!~道東エリアをモデルとした地域AT戦略~<全体版>」(PDF)

上記は、ヨーロッパおよび南北アメリカで、「アドベンチャーツーリズム市場」と「全旅行市場」の、一人当たりの消費額を比較したグラフです。

ヨーロッパでは「全旅行市場」の約1.7倍、南アメリカでも「全旅行市場」の約1.7倍、北アメリカでは「全旅行市場」の約2.5倍の消費額があることが分かります。

旅行体験自体への出費だけでなく、靴やウェアといったアウトドア用品への出費も行われていることから、消費単価が高くなっているようです。

③近年はソフトなものが人気

引用元:経済産業省 北海道経済産業局「日本初、アドベンチャーツーリズムマーケティング戦略策定!~道東エリアをモデルとした地域AT戦略~<全体版>」(PDF)

こちらは、アドベンチャーツーリズム市場全体のトレンドの変化です。

約10年前(2006年)は、クライミングやラフティングといった、ややハードな印象のアクティビティが人気だったようです。しかし近年は、1位にハイキング、2位にバックパッキング(リュックサックを背負った徒歩での旅行)が続くなど、ソフトなアクティビティの人気が高まっています。

日本での事例は?

「ハートランド・ジャパン」の事例を紹介します。

「ハートランド・ジャパン」は、リベルタ株式会社が手掛ける事業で、アドベンチャーツーリズムを通して、日本の地方部を世界に発信する取り組みを行っています。

例えば、「出雲・石見銀山・江の川リバートレイル」と題した、ガイド付きのツアーを実施しています。広島から島根を、5泊6日の工程で巡ります。地元住民との交流が多く、数々の文化体験をすることができるのが特徴です。

<体験できるものの一例>
・温泉街での温泉体験
・石見神楽の鑑賞
・石見神楽のお面の制作体験
・石見神楽の練習風景の見学と実体験
・石州瓦の制作現場の見学
・焼き物体験
・江津本町のどら焼き屋さんの見学
・酒蔵見学
・江の川の伝説の川漁師さんのお宅訪問
・江の川でのカヌー
・学童施設での子どもたちとの交流 など

画像引用元:プレスリリースより

通訳案内士がガイドするため、外国人参加者・地元住民双方が言語の問題で悩まなくて済みそうです。サイトを見ると、本ツアーのほかに、津軽(青森)のツアーや、阿蘇(熊本)のツアーなどもありました。

「Tour revel」として、「Fitness」や「skill」などが段階別に示されているのは、参加者に親切だなと思いました。

参考:PRTIMES「【ド田舎インバウンドの挑戦】廃線となったローカル線跡をアドベンチャートラベルで再生。島根県の奥深い集落に欧米豪の訪日客を誘致。外国人専門家らは日本の田舎をどう評価するのか?

参考:Heartland JAPAN – DESTINATIONS IN JAPAN’S HEARTLAND

まとめ

「アクティビティ」「自然」「異文化交流」のうち、2要素以上を組み合わせた旅の形式、それが「アドベンチャーツーリズム」です。現在、ヨーロッパや南北アメリカでは「富裕層」に人気が高く、一人当たりの消費金額も高額です。

そのこともあり、日本でも本格的に取り組む団体が増えています。事例として紹介した「ハートランド・ジャパン」では、地方部を舞台に、地元住民との交流や文化体験をパッケージングすることで、地域の魅力を大きく引き出しています。

地方部への訪日外国人の誘致は、インバウンドにおける大きな課題の一つとなっています。「アドベンチャーツーリズム」はその突破口になるかもしれませんね。

歴史に根付いた文化体験と、豊かな自然。地方部の魅力を、私たちも再認識する必要がありそうです。

インバウンドらぼ 編集メンバー J.M