「日本は深夜まで営業する娯楽・文化施設、交通機関が少ない。夜が楽しめない。」という声が訪日外国人客の中であります。

2016年に公益財団法人日本交通公社が12地域(韓国、中国、台湾、香港、タイ、シンガポール、マレーシア、インドネシア、アメリカ、オーストラリア、イギリス、フランス)の20~59歳の海外旅行経験のある男女へ行ったアンケートでも、不満だった点の7位に「ナイトライフ(バーやクラブ・ナイトマーケット等)体験」が入っています。
訪日外国人客への日本旅行に関するアンケート(不満なこと)出典:アジア・欧米豪 訪日外国人旅行者の意向調査(平成28年版)|公益財団法人日本交通公社
(P33 項目:24 「日本旅行で不満だった点は何ですか?」)

■ナイトタイムエコノミーとは?

「夜間市場」とも呼ばれている午後8時〜午前3時の時間帯の経済活動のことを指します。 主に、訪日外国人向けに夜間の経済を活性化させる施策のことですが、 レストランやバー、クラブなどの「飲食や遊興」の他にも、英会話やゴルフスクールといった「習い事」、ハロウィンやクリスマスといった「お祭り」、深夜バスや夜間医療といった「インフラ」なども含まれています。

ナイトタイムエコノミー先進都市ロンドンの取り組み

世界的にもナイトタイムエコノミーの取り組みが盛んに行われています。
ナイトタイムエコノミーにいち早く取り組みを始めたのが、イギリス・ロンドンです。

ロンドン市長サディク・カーン氏は、2016年の市長選の際にロンドンの文化的生活の強化を優先事項の一つに挙げ、「ナイトシーザー」という役職の創設をマニフェストに掲げました。初代「ナイトシーザー」には、ロンドン北西部カムデン区長を務め、自身も20年以上にわたりDJとしてクラブナイトを開催している、エイミー・ラメ氏が任命されました。

またロンドンは、2012年のロンドンオリンピック・パラリンピックの大会期間中のみの予定だった「ナイト・チューブ(ロンドン地下鉄の主要路線24時間運行)」を2016年8月から開始し、現在では昼夜問わず、ほとんどの主要地域を行き来できるようになっています。なお、最初の1年で1億7100万ポンド(約24億7794万円)の経済効果をもたらしました。

出典:夜のロンドン 24時間年中無休の都市 ロンドンからシティ・イノベーション分析

夜の市長 「ナイトメイヤー」 とは

ロンドンでは、行政から任命され「ナイトシーザー」という役職がありましたが、世界的には、夜の市長「ナイトメイヤー」を採用している都市が多く有ります。

ナイトメイヤーは、2002年にオランダ・アムステルダムで発足した「夜の市長」として活動するアムステルダム市長公認の制度。ナイトカルチャー、ナイトライフは社会的利益、文化的利益、そして経済的利益を市にもたらすことを唱え、行政、夜の街、消費者の中間的な立場で、対話を通して信頼関係を築きながら多くの課題に当たっていく存在であり、現在世界の様々な都市で同様のものが導入されている。
引用:なぜ渋谷に夜の観光大使が誕生したのか?ナイトアンバサダーZeebraに密着。

2016年4月には、オランダの首都アムステルダムで同時期に行われていたEU(欧州連合)の「市長サミット」に合わせて、世界初の第1回「ナイトメイヤー・サミット」が2日にわたって開催されました。このサミットには、渋谷区観光協会の公認を受けた「ナイトアンバサダー」Zeebra氏が参加し基調講演を行っています。

「夜間の経済」「公衆衛生と政治」「都市空間の再定義」「モビリティ」「ナイトメイヤーへの道」の5つのテーマをメインとして講演や議論が盛んに行われました。

参照:なぜ世界各地の都市で「夜の市長」が注目されているのか
   なぜ渋谷に夜の観光大使が誕生したのか?ナイトアンバサダーZeebraに密着。

日本でのナイトタイムエコノミーの取り組み

日本でも2017年12月に、官民組織「24hour Japan推進協議会」が設立され中間提言が出されました。
参照:ナイトタイムエコノミー議連 中間提言

また、2018年1月17日には、ナイトタイムエコノミーの現状や課題などについて考えるシンポジウムが都内で開かれ、官民の有識者らが市場の現状やポテンシャルなどについて意見を交わしました。
参照:ナイトタイムエコノミーが秘める可能性とは。「OPEN TOKYO LIVE 2018」が開催 

東京でも、ナイトタイムエコノミーに力を入れている区も増えています。

渋谷区

先述の通り渋谷区では、ラッパーのZeebra氏が、渋谷区観光大使ナイトアンバサダーを務めています。また、渋谷区は「ナイトメイヤー(夜の市長)」創設も準備しており、同氏が準備委員会の設立宣言を行いました。
参照:東京にも「夜の市長」を創設へ Zeebraが準備委員会の設立を宣言

台東区・千代田区・文京区

東京文化資源会議は、夜間における上野公園文化資源・施設の全面的な活用策について提案を行う「上野ナイトパーク構想会議」を設立し、2018年10月3日に第1回会議を開催しました。年内に検討を進め、2019年1月に構想を発表する予定です。
参照:上野ナイトパーク構想会議の設立及び第1回会議の開催について

■東京文化資源会議とは

上野、本郷、谷根千(谷津・根岸・千駄木)、神保町、秋葉原、神田、根岸等の特色ある文化を保有する地域を中核とした上野寛永寺から旧江戸城に至る東京都心北部一帯を「東京文化資源区」とし、わずか半径2kmの徒歩圏に集中した、この地区の文化資源を活かしたプロジェクトを進めています。
参照:東京文化資源会議 東京文化資源区とは

まとめ

ナイトタイムエコノミーによって、街の環境や治安が悪化するのを防ぐことは、世界のどの都市でも共通のテーマになっています。 夜に活動する人、昼に活動する人が交流して理解する事が治安維持と規制緩和のカギとなります。そのためにも、「ナイトメイヤー」や「ナイトシーザー」といった夜の代表が必要になってきます。

他にも、現在は夜に公共交通機関が動いていないことがネックになってきますが、日本でも終電の延長やバスの活用、相乗りタクシーの許可などの施策も検討されているようです。

ナイトタイムエコノミーが盛んになれば、日本人にとっても恩恵が有ります。仕事終わりに映画館や劇場のレイトショーを鑑賞することがしやすくなったり、コンサートや、野球のナイターをはじめとしたスポーツ観戦の際に電車の時間を気にしなくてすむといったことになるかもしれません。今後、日本でも安全で快適な「夜活」が増える事を期待したいと思います。

 

インバウンドらぼ 編集メンバー M.H