2017年には訪日外国人客数が2,800万人を突破しインバウンド需要に沸いていますが、世界的にも国外への旅行は盛んで、毎年約12億人が国外への旅を楽しんでいます。
一方で、その観光地に耐えられないくらいの観光客が押し寄せる「オーバーツーリズム」が世界的に問題になっています。

国連でも2017年を「開発のための持続可能な観光の国際年」として、世界的に活発な議論が行われました。

今回は、世界と日本のオーバーツーリズム事例をみていきたいと思います。

世界の事例① バルセロナ(スペイン)

バルセロナは、1992年のバルセロナ五輪を機に観光都市として開発を進めてきました。
現在ではスペインで一番の観光都市へ成長しましたが、増えすぎた観光客によるオーバーツーリズムが問題になっています。

市民約160万人に対して、年間約3,200万人という人口の20倍近い観光客が訪れています。それにより、騒音問題や民泊でアパートの空室が減ることでの賃貸料上昇など市民生活への支障も出ています。

2015年に就任したアダ・コラウ市長は「バルセロナをきれいな街に再生させる」と宣言し、2016年10月からの1年間、歴史地区での新たな商業施設等の開設を禁止するなどの対策を行いました。また「2020年に向けた観光都市計画」では、宿泊を目的としたマンションの新たな建設を許可しないことと、固定資産税の引き上げを発表しました。

出典:東洋経済新聞 バルセロナが「観光客削減」に踏み切る事情 世界屈指の観光都市が抱える悩み

世界の事例② ピーピーレイ島マヤ湾(タイ)

マヤ湾は2000年に公開されたレオナルド・ディカプリオ主演の映画『ザ・ビーチ』のロケ地となったことで人気が急上昇しました。小さな湾に1日約200台のボートで約4,000人の観光客が訪れるようになり、その結果マヤ湾の環境破壊が深刻化しました。近年の調査では、同地域のサンゴ礁は大部分が消えかつて見られた海の生態系も失われてしまったという報告がされています。

行政も環境保護のために動き出し、タイ国立公園・野生動物局は2018年4月4日に、6月から9月の4カ月間は、マヤ湾入域を禁止することを発表しました。

参照:トラベルボイス 観光客の増え過ぎ問題「オーバーツーリズム」で人気ビーチが入域制限、タイ・映画ロケ地ではサンゴ礁が消滅、観光客増より「持続可能なツーリズム」を【外電】

日本の事例 鎌倉市(神奈川県)

世界だけでなく、日本にとっても対岸の火事では無くなってきています。
鎌倉市は2017年の人口が約17万人に対して、観光客数が約2,129万人と約125倍に上りました。上述したバルセロナの「観光客数が市民の20倍」をはるかに上回る結果となっています。

地元住民の足であり観光資源でもある江ノ島電鉄では、2018年ゴールデンウィークの5月3日と4日に鎌倉駅西改札にて入場規制を行い、地元住民や常時鉄道を利用する人へは事前に証明書を配布、改札外の乗車待ち列に並ばずに改札を通るという社会実験を行いました。

3日は駅構外への乗車待ちの列は発生しなかったため優先入場も行われませんでしたが、4日は駅前の通りをはさんで向かい側の歩道にまで伸び、最大で約100mにまでなりました。
今回の実験で証明書を提示し優先入場した人は85人で、発行枚数(1,471枚)に対して使用割合は約6%でした。
駅への入場を待つ観光客へ市がアンケートを行ったところ118人から回答があり「理解できる」が47.5%、「おおむね理解できる」が28.8%となり、合わせて約8割を占めました。

参照:タウンニュース 住民優先に8割が「理解」 市が社会実験の結果公表

かまくら観光 観光客数及び海水浴客数 
鎌倉市 鎌倉の人口と世帯数(地域・町丁・字別)平成29年12月

観光庁が「持続可能な観光推進本部」を設置

日本政府でもオーバーツーリズム問題への取り組みが進められています。

観光庁は2018年6月18日に「持続可能な観光推進本部」を設置しました。
この部署は増加する訪日外国人客のニーズと地域住民の生活環境の調和を図り、両者の共存・共生を目指し、対応策を総合的に検討・推進することを目的としています。

(課題の例)
・ 外国人観光旅客の集中による観光地域の混雑
・ 外国人観光旅客の増加による住民の生活環境の変化
・ 外国人観光旅客のマナー

(参考)「持続可能な観光推進本部」の体制
本部長:観光庁長官
事務局長:観光庁観光地域振興部長
本部員:観光庁各課室長

参照:観光庁 観光庁に「持続可能な観光推進本部」を設置しました

まとめ

バルセロナなど観光地として人気の高い場所だけの問題にも見えますが、マヤ湾のように映画やメディアの影響で一気に有名になる場合も有ります。特に昨今はSNSの発達により一躍有名になる観光地は増えています。

海外旅行は昔に比べて手軽なものになりましたが、旅行者がその土地の文化や環境を守っていくことがこれまで以上に大切になっていくでしょう。
訪日外国人客を観光公害の主要因子にさせないためにも、まずはお互いの文化を知り、問題を未然に防ぐため、多言語でのアナウンスを行う必要性は増えていきます。
インバウンドのターゲット層を日本文化に関心の高い富裕層に絞るなど、今後は地域の環境と観光の両立を図るために、戦略を練った対策を行っていく必要がありそうですね。

インバウンドらぼ 編集メンバー M.H