みなさん、「Google翻訳」などweb上で翻訳サービスに触れたことはありますか?そういった、コンピューターを通して自動で翻訳するシステムを「機械翻訳」と言います。2016年11月には、「Google翻訳」が大幅なアップデートをして精度が上がったことも話題となりました。

精度が向上し、多言語対応にも活用ができるようになってきている「機械翻訳」。創業32年目、神楽坂に本社を置く老舗の翻訳会社「株式会社川村インターナショナル」営業チーム 青木幸博さんに、機械翻訳の現状や多言語対応に便利なサービスについて伺いました。


インバウンドらぼ(以下インらぼ):よろしくお願いいたします。まずは、御社の事業内容についてお聞かせください。

青木様:現在はITと医薬・医療機器関連を中心に、産業機械の取扱説明書から一般的なビジネス文書、インバウンド向けの観光案内やウェブサイトの翻訳など、分野を問わず幅広く翻訳サービスを提供させていただいております。

その一環で、約5年前から機械翻訳のサービスを提供しており、「Globalese」という、欧米の機械翻訳エンジンの日本における総代理店を始めたのもちょうど5年前になります。機械翻訳の共同研究や、社内外でのセミナーなども行わせていただいております。

インらぼ:御社の案件において、機械翻訳案件が占める割合はどの程度ですか?

青木様:2017年は15%程度ですね。15%を占める翻訳会社もなかなかないと思います。機械翻訳サービスを提供している翻訳会社はまだ少なく、導入に慎重な会社が多いのも現状です。

インらぼ:機械翻訳に携わられたきっかけをお聞きできますか?

青木様:もともと外資系のお客様とのお付き合いが多かったことが関わっています。ヨーロッパは言語数も多く、製品の取扱説明書にしても多言語展開が求められます。取扱説明書やマニュアルはボリュームが大きくなればなるほど翻訳費用もかかります。

そこで、「翻訳支援ツール」が積極的に活用されるようになりました。例えば「翻訳メモリ」ですね。過去に翻訳したものをデータベース化し有効活用することで、一から翻訳するよりコストを下げられるというものです。ただ、「翻訳支援ツール」を使うことで格段に作業効率は上がりましたが、コストダウンには限界がありました。

機械翻訳はそうした中で欧米を中心に使われるようになりました。英語・フランス語・イタリア語などヨーロッパで使用されている言語は文法的に近いため、機械翻訳と相性が良いということもあると思います。また、機械翻訳後にポストエディット(人によるチェック・校正)をして、さらに文章の精度を上げる手法が早い段階から試されてきました。

ヨーロッパ圏でのそういった事情があり、欧米のお客様から「英語→日本語」への機械翻訳できないかというご要望が多くなったため、弊社も機械翻訳を活用したサービスを始めさせていただきました。

ネイティブも認める流暢さ

青木様:現在主流となっているのは、ニューラルネットを活用した機械翻訳です。AIに過去のデータを学習させた上で、データと結びつけながら、AIが考えて翻訳結果を出力します。2016年の11月に、Googleがニューラルネット機械翻訳(NMT)をweb上で公開しました。実際使用してみたら精度も良く、結構使えると感じました。

近年主流だった統計ベースの機械翻訳※は、英語から日本語の翻訳では、相応のデータが集まれば品質の良い物が出せました。ただ、日本語は主語などが省略されることが多く、統計ベースの機械翻訳で無いもの補うということができないため、「日本語→英語」となると納得のいくクオリティを出すことができませんでした。

※統計ベース翻訳(Statistical Machine Translation)
膨大な対訳データから、統計結果をもとに適した訳を割り出す仕組み。

それが、NMTでは、AIによって翻訳元の文章に無い主語の補足や、ネイティブの人が読んでも違和感が無いような流暢な文章も出せるようになりました。

インらぼ:確かに、Googleの翻訳も4・5年前とは見違える精度だと感じていました。

青木様:ただ、機械翻訳には未だ間違いもありますので、現状はあくまで「参考」とお考えいただくと良いと思います。NMTは従来の機械翻訳と違い、話にもならないような誤訳などは減った一方で、翻訳文が流暢になったためミスが見つけづらくなったという話を良く聞きます。機械翻訳の結果をそのまま使うのではなく、ポストエディットなど、人の目を通すことはまだまだ重要です。

インらぼ:web上で無料提供されている翻訳サービスは、情報漏洩のリスクがあると聞きました。

青木様:例えば、無料で利用できるWeb上のGoogle翻訳ですと、翻訳精度向上のためにGoogle側にデータが回収されます。実際、別のクラウドサービスで情報流出が起きるなど、ビジネス使用を考えるとセキュリティ面で懸念が残ります。Google翻訳でも有料のオプションを使えばデータが暗号化されるので、情報漏洩のリスクを回避できます。弊社ではそういったオプション等を活用して、リスク管理をしながら機械翻訳サービスを提供しています。

機械翻訳でコストは下がる?

青木様:内容にもよりますが、機械翻訳+ポストエディットの場合、人手翻訳の約2分の1~3分の1のコストで行うことができます。ただ、文章表現が問われるものやクリエイティブな内容のものは、まだまだそのニュアンスを機械翻訳するのが難しいので、人手翻訳が良いと思います。

インらぼ:スピード感はどのくらいになりますか?

青木様:通常、人手の翻訳の場合は「翻訳→チェック」という流れになります。それが機械翻訳を使うと、「翻訳」の時間がほぼゼロになります。ポストエディットを行う場合も、従来「チェック」の時間だったものに相当するので、大分短縮できることがお分かりいただけると思います。

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機械翻訳のインバウンド分野での活用とは?

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