国土交通省は、平成28年を「生産性革命元年」と位置づけ、宿泊産業において「宿泊産業を刷新し、我が国の基幹産業に」という目標を掲げ、生産性向上につながる取り組みを実施してきました。
そこで今回は、宿泊業の現状と課題、国土交通省が行ってきた取り組みについて調べてみました。

宿泊産業の生産性

平成28年度の厚生労働省「労働経済白書」によると、日本の労働生産性は実質、名目ともにOECD諸国の中では低い水準となっています。

※名目値とは、実際に市場で取り引きされている価格に基づいて推計された値。実質値とは、ある年からの物価の上昇・下落分を取り除いた値。

さらに産業別に見てみると、アメリカと比較した少し古いデータですが、

産業別にみた日本の労働生産性水準(2010~2012年平均)は、化学(143.2%) や機械(109.6%)で米国を上回り、輸送機械(92.7%)でも遜色ない。
一方、サービス産業をみると、運輸(44.3%)や卸売・小売業(38.4%)、飲食宿泊(34.0%)などの主要分野で格差が依然として大きい。

参照: 公益財団法人日本生産性本部

とあり、産業全体が低いのではなく産業により差があり、飲食、宿泊といった観光業の中心産業ともいえるサービス業の労働生産性が低いようです。

宿泊産業の人手不足

さらに、宿泊産業は人手不足という側面もあります。 2016年1月の帝国データバンクによる「人手不足に対する企業の動向調査」では 旅館・ホテルの約6割が「人手不足」で、これは業種別でワースト4位という結果です。

参照: 帝国データバンク

観光庁の取り組み

このような状況を打開すべく、 観光庁は、平成28年度に(一社)日本旅館協会と連携し、全国8つの旅館・ホテルでコンサルティングを行い、全国20カ所で生産性向上に関する実践型講座「ワークショップ」を開催しました。 また、それぞれの「カイゼン」活動の好事例を、宿泊産業に携わる方の参考となるよう、動画及び事例集にまとめ、観光庁HPにて公表しています。

http://www.mlit.go.jp/kankocho/topics06_000099.html

参照: 事例集

今後の課題

厚生労働省「労働経済白書」によると、実質労働生産性を要因分解すると、下記のグラフのようになります。日本の労働生産性の低さの一番の問題点は付加価値要因がほとんど寄与していないことと言えます。

課題として下記の2点が挙げられています。

  1. ソフトウェア等の IT 関連である情報化資産への投資
  2. OFF-JT を始めとする人的資本への投資が弱い。このため、情報化資産、人的資本への投資を増加させること

参照: 平成28年度厚生労働省 労働経済白書

まとめ

いかがでしたか。
残業時間の削減やワークライフバランスなど、様々な業種で働き方改革が求められていますが、政府が観光産業を自動車産業に匹敵する産業にすることを掲げている中、宿泊産業の生産性向上は大きな課題であると感じました。
ただ、労働生産性というと個人の働き方の工夫ととらえている人も多いと思いますが、労働生産性とは、生み出した付加価値を労働投入量で割ったものです。そもそも儲からない構造の産業であるとすれば、個人のがんばりだけでは限界があります。成果を出そうと思うと、IT投資や人材の能力開発投資など、付加価値を生み出す仕組みづくりが必要になってきます。インバウンド需要が追い風になってきている今、国によるさらなる支援が行われることを期待したいと思います。

インバウンドらぼ 編集メンバー Y.N